ギフティングとは、企業がインフルエンサーやSNSユーザーへ「商品を贈る」ことで自然な発信や認知拡大を狙う施策のことです。広告よりも生活者目線で伝わるため、SNSマーケティングの中心施策として注目されています。インフルエンサーによって商品が紹介されることで広告感が薄れ、多くの人に商品に興味を持ってもらうことが期待できます。
しかし、一方でステマ規制やPR表記ルールの強化など、企業側のリスク管理も求められています。
ギフティングの種類や実施手順・注意点を確認して、UGCやファンを増やし広告費を下げる施策を進める参考にして下さい。
ギフティングとは

ギフティングとは、企業がインフルエンサーやSNS発信者に対して商品提供を行い、SNSで紹介してもらうマーケティング手法です。
ギフティングの例としては以下が挙げられます。
・化粧品ブランドがインフルエンサーへ新商品を提供する
・飲食店が人気グルメインスタグラマーに試食招待
・アパレルブランドがファッション系インフルエンサーへ新品コーデを発送
インフルエンサーなどの自然な口コミはユーザーの信頼を得やすく、企業は広告費を抑えながらSNS拡散を狙えます。近年は消費者庁がステマ規制を強化しており、PR表記のルールが明確になっているので、ギフティングへの注目がさらに高まっています。ギフティングは広告費を使わないSNS施策ではなく商品を活用した非広告型マーケティングです。
ギフティングは増加していますが、ステマ規制の影響でPR表記や投稿義務などの理解が不十分な企業も多いです。まずは「広告ではないが完全に自由でもない」という中間領域の施策であることを押さえる必要があります。
ギフティングの種類
ギフティングは「有償ギフティング」と「無償ギフティング」に大きく分けられます。報酬の有無や投稿義務の違いが選定基準になります。
| 項目 | 有償ギフティング | 無償ギフティング |
|---|---|---|
| 金銭の報酬 | あり | なし(商品の提供のみ) |
| 投稿の有無 | 必須 | 任意 |
| 投稿内容 | 内容の指定・事前確認ができる | コントロールできない |
| 表記 | PR表記必須 | 案件であることを明記 |
それぞれの特徴や注意点を確認しましょう。
有償ギフティング
有償ギフティングとは、商品提供に加えて報酬を支払い投稿を依頼する形式です。商品提供を含むPR依頼であり、PR投稿の一種になります。
有償ギフティングの特徴は以下です。
- 商品提供+報酬支払い
- 投稿を必ず行うことが確約
- 契約内容に基づき納品物を管理
注意すべき点としては、報酬が発生するためステマ規制上はPR表記が必須となり、広告として扱われることです。投稿内容をある程度コントロールできるので、確実に露出を生みたい企業に向いています。
参考:消費者庁 ステマ規制(https://www.caa.go.jp/)
無償ギフティング
無償ギフティングとは報酬なしで商品提供のみを行う施策です。投稿は任意であり、インフルエンサーが気に入った場合のみ紹介されます。
無償ギフティングの特徴は以下です。
- 商品提供のみで報酬なし
- 投稿義務なし
- 自然な発信につながりやすい
投稿内容を指示することはできないので企業が求めている内容を訴求してくれるとは限らず広告にならないこともあります。無償ギフティングは PRではありませんが、商品提供という利益供与があるので、ステマ規制上は投稿時に「PR」表記が必要です。
自社に合うのは有償か無償かを事前に整理しましょう。短期成果を狙うなら有償、自然な口コミを獲得したいなら無償が向いているでしょう。
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ギフティングのメリット
ギフティングのメリットは以下が挙げられます。
- 信頼を得やすい
- 認知拡大効果がある
- インフルエンサーが自然な形で紹介してくれる
ギフティングの最大の価値は「自然な口コミ投稿」です。広告よりも生活者に近い目線で紹介されるため信頼を獲得しやすく、親しみを持って受け止められやすくなります。広告では届かない層にアプローチすることができるのも大きなメリット。フォロワーの共感を得やすい発信ができるため、ブランドの第一印象づくりに最適です。
信頼を得やすい
ギフティング投稿はインフルエンサーの個人的な感想として語られることが多く、広告よりも信頼性が高いと感じられやすいです。
この理由は、広告よりも自然な文脈で紹介されること、インフルエンサーの世界観を崩さずに発信されるからです。興味のあるインフルエンサーが紹介しているから、試してみたいというユーザーは少なくありません。
ユーザーの約70%以上が広告よりも第三者の口コミを信頼するというデータもあり、ギフティングとの相性が非常に高い施策といえます。
参考:ニールセン 広告信頼度調査 (Nielsen Trust in Advertising Study)
認知拡大効果がある
ギフティングは低コストで複数のインフルエンサーへ同時アプローチできるので、認知拡大に非常に効果的です。インフルエンサーにはファンやフォロワーが大勢ついているからです。これまで自社の商品に興味のなかった層にリーチすることができ、ターゲット層を拡大することも可能です。
商品を提供することでインフルエンサーが投稿すれば、広告費ゼロで露出を得ることができます。CTRやCPMを気にせず露出を獲得できるのです。企業のSNSだけではリーチできない層にも認知を広げることができます。
インフルエンサーが自然に紹介してくれる
インフルエンサーが商品を試してみて「好きだから紹介したい」という動機が生まれやすいため、ユーザーが参考にしやすい投稿になります。消費者の一人として紹介するので、広告のように押し付けられていると感じずに、自然に商品への関心を高めやすくなるでしょう。
レビューを参考に購入を検討したいというユーザーは多く、特にインスタギフティングは美容・コスメ・グルメ領域で強い効果を発揮します。
ギフティングのデメリット
ギフティングはメリットがたくさんありますがデメリットもあります。
- 費用対効果がわかりにくい
- ステマになる可能性がある
- 差別化が難しい
ギフティングは強制力を持たないため、確実な成果を求める施策としては不向きです。ステマ規制リスクも必ず理解する必要があります。
投稿が確約されないことがギフティングの最大の弱点です。さらにステマ規制や競争激化により、戦略的な設計が必須になっています。
費用対効果がわかりにくい
かけたコストに対しての効果がどれくらいか図りづらいのはデメリットです。インフルエンサーの影響力やフォロワーの数によって効果が違うからです。ギフティングの効果も確証できるものではありません。
そして、商品を提供しても投稿されるかどうかは相手の判断次第です。そのため、商品原価や送料を投下しても「投稿なし」で終わるケースもあります。商品が合わなかった場合レビューしてくれないということも。
動画やコンテンツの紹介の手間もあるので、無償の場合は後回しになり投稿しないケースも多く企業側の大きな課題になっています。
ステマになる可能性がある
ステマになる可能性があることには注意が必要です。無償ギフティングであってもPR表記をしないとステマになるからです。
例えば、インフルエンサーのSNS投稿を広告の表記をせずに「お客様の声」として掲載したり、効果があると消費者に誤認させるような投稿を、利益提供を隠した上でインフルエンサーに投稿させたりといった事例があります。
PRの投稿であること、商品の提供を受けていること明らかにするために「#PR」「#Sponsored」「#提供」のように明記しておくことが重要です。商品提供は「利益供与」にあたるため、投稿する場合は必ずPR表記が必要です。
管理の工数がかかる
管理の工数がかかることもデメリットとしてあげられます。インフルエンサーの選定や商品の発送・進行管理などに時間がかかるからです。投稿後も不適切な表現や誤情報がないか投稿すべてを管理することが望ましいです。
さらに無償ギフティングの場合は投稿されない可能性もあります。より多くのインフルエンサーにアプローチする必要があるので、社内での作業負荷が高くなる傾向があります。
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ギフティング実施の流れ

ギフティングは以下のの5ステップで進めていきましょう。
- 目的の明確化
- インフルエンサーの選定
- インフルエンサーへの依頼・契約
- 商品の抵抗・投稿の実施
- 効果測定
ギフティングは1回では成果が出にくいです。小規模でも継続すれば投稿されやすい形が見え、戦略精度が上がるはずです。
目的の明確化
ギフティング施策は目的が曖昧なまま進めると成果が不明瞭になります。目的を明確化することが重要です。
例えば、以下のような目的を設定します。
- インスタで認知拡大をしたい
- 商品レビューを増やしたい
- 公式アカウントのフォロワーを増やしたい
目的を一言で定義できれば、インフルエンサー選定とKPI設計が一気に明確になります。ちなみにSNSマーケティングの成果指標には、認知度向上、エンゲージメント、ウェブサイト誘導、コンバージョンなどがあります。これらを評価するために、フォロワー数、リーチ数、エンゲージメント率、クリック率、コンバージョン率などのKPIが推奨設定です。
インフルエンサーの選定
インフルエンサーの選定は重要です。フォロワー数が多いだけでなくそのフォロワーと自社ブランドとの相性も確認しましょう。インフルエンサーの信頼性も大切です。
フォロワーの属性が商品にマッチしているか、投稿の世界観がブランドと合っているかも選定する基準になります。
ギフティング成功の9割は「誰に届けるか」で決まります。ステマやギフティング投稿に慣れている質の高いコンテンツを発信するインフルエンサーを選定する必要があります。
フォロワー数は選定する上で優先順位が高い指標ですが、それに縛られずに積極的に実施しましょう。ナノインフルエンサーはフォロワー数が少ない分、フォロワーとの距離が近いため、エンゲージメント率が高くなることが期待できるからです。
インフルエンサーへの依頼・契約
インフルエンサーの選定をしたら、依頼・契約という流れになります。有償ギフティングの場合は報酬が発生するので、契約期間や報酬体系、コンプライアンス・秘密保持に関する取り決めを行います。無償の場合はサンプリングに近い形なので契約は発生しません。
依頼文の内容は以下を参考にして下さい。
【依頼分の内容】
- 企業名・所在地・連絡先
- 事業内容
- ギフティング担当者
- 広報対象となる商品・サービスの概要
- アピールしたいターゲット層
【契約時の取り決め事項】
- 契約期間
- 納品物(依頼する業務)
- 報酬(単価・支払方法・/支払時期・経費など)
- コンテンツの権利の帰属先
- 禁止事項・コンプライアンス
- 秘密保持
ギフティング契約は簡易な合意文で構いませんが、SNS炎上リスクを下げるために必須です。
商品の提供・投稿の実施
契約が完了したら商品・サービスの提供を行います。商品を届ける際は、丁寧なメッセージを添えることで投稿率が高まります。
商品に同梱すべきものは以下です。
- ブランドメッセージ
- 商品ストーリー
- 使い方のポイント
- 希望ハッシュタグ
- 問い合わせ先
ギフティング商品は写真映えしやすい梱包にすると、自然投稿が増えます。
契約内容に応じてインフルエンサーはコンテンツを作成して投稿。投稿した内容が禁止事項に該当しないか事前に確認をすることが重要です。企業はモニタリングを行い不適切なところがないかチェック。トラブルがあった場合に対応できる体制を整えましょう。
効果測定
投稿されたら効果測定をします。
- 投稿のエンゲージメントやフォロワー数などの増加
- LPのクリック率
- 売上の増加
などをトラッキングして、ギフティングの効果を分析します。
求めていた効果が出ない場合は、インフルエンサーを再度選定して比較し、自社にあったインフルエンサーを探すとよいでしょう。ギフティングの効果測定には、インフルエンサーマーケティング支援ツールやUGC(ユーザー生成コンテンツ)ツールの活用が効果的です。例えば、https://insightsuite.jp/は無料プランで1アカウント利用できます。運用状況を一目で把握でき、改善ポイントを見つけることが可能です。
継続的に実施すると、どのタイプのインフルエンサーが最も効果的か傾向をつかめます。
ギフティングの注意点
ギフティングで失敗しないためにはいくつか注意点があります。
- インフルエンサーは厳選する
- 投稿を義務化しない
- 投稿内容を指定しすぎない
- ステマにならないように注意する
- ハッシュタグの希望を伝える
ギフティングはインフルエンサーとの関係づくりが重要です。押し付けてしまうと投稿率が下がるため、あくまで好意投稿を促すくらいのスタンスがよいでしょう。
ステマ規制とブランドリスクを防ぐために、ギフティングの注意点をおさえておきましょう。
インフルエンサーは厳選する
インフルエンサーを厳選することが重要です。フォロワー数だけで選ぶのではなく、質の高いインフルエンサーを選定する必要があります。
この理由としては以下が挙げられます。
- ニセフォロワー(買われたフォロワー)が混ざっている場合がある
- 投稿の雰囲気がブランドと合わない場合、逆効果になる
- 投稿率が低いインフルエンサーもいる
また、自社ブランドのイメージに合っているインフルエンサーであることを事前に吟味しましょう。質の高い選定はギフティング施策の最重要ポイントです。
投稿を義務化しない
無償ギフティングの場合は、報酬は発生しないので投稿を義務化しないようにしましょう。商品レビューの依頼という形なので、強制するとインフルエンサーの間でブランドイメージが悪くなる可能性があります。
ギフティング投稿は任意の投稿を指し、義務化すると広告扱いになるため契約もコストも増えます。契約を交わしているわけではないので、投稿内容を強制することがないようにしましょう。
投稿内容を指定しすぎない
有償ギフティングは投稿内容などを指定することができますが、指定しすぎないようにしましょう。なぜなら、インフルエンサーの世界観が損ねられ、ユーザーに意図的に感じられてしまう可能性があるからです。
広告感の強い印象となると、インフルエンサーのフォロワーが離れたりPR効果を見込めなかったりマイナスな影響を与えかねません。自然な口コミに価値があるので、細かすぎる要望は逆効果となります。企業側からは、ハッシュタグの希望や世界観の共有にとどめておくとよいでしょう。
避けたい表現や伝わると嬉しい価値など、ブランドガイドラインの共有は必要です。
ステマにならないように注意する
無償でも有償でもPR表記は必須です。 「#提供」「#PR」「#ギフティング」など発信者が選びやすい表記を渡しておきます。
ステルスマーケティングと判断されると、消費者を欺く行為をしたとされ企業の信頼を損ないます。ギフティングの効果を得るためには、信頼できるブランドイメージを与えながら商品の認知を拡大することが重要です。
ハッシュタグの希望を伝える
インフルエンサーに企業側が希望するハッシュタグは必ず伝えましょう。ユーザーからの検索にヒットし、閲覧数が伸びることにつながるからです。投稿率を上げたいなら「指定」ではなく「推奨」として伝えるほうがよいでしょう。
ハッシュタグの例
- #ブランド名
- #商品名
- #提供品
- #ギフティング
希望のハッシュタグを伝えることでインフルエンサーなど投稿者の自由を尊重しつつ、ブランド側の意図も明確にできます。
ただし、ハッシュタグを最低限の指定だけして、詳細はインフルエンサーに任せたほうが良いです。
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ギフティングに関するQ&A

ギフティングに関するQ&Aを紹介します。
- ギフティングとPRとの違いは?
- ギフティングの報酬はどれくらい?
よくある疑問をわかりやすく整理します。
ギフティングとPRとの違いは?
ギフティングは、インフルエンサーに商品を提供して、自身の言葉でSNSで紹介してもらう手法です。投稿するかどうかや内容はインフルエンサーに委ねるのが特徴です。一方、PRはプレスリリースなどを通じて不特定多数に広く訴求する手法です。報酬の支払いと投稿の義務があります。
有償ギフティングの場合は、契約によって企業が投稿内容をコントロールしやすいという特徴があります。
ギフティングとPRは混同しやすいので注意が必要です。投稿を義務化した時点でPRになるため、契約形態とリスクの違いを理解しておきましょう。
ギフティングの報酬はどれくらい?
無償ギフティングは報酬なしが前提です。
有償ギフティングはフォロワー数によって大きく異なります。一般的に「フォロワー数 × 3〜5円」が目安となります。
投稿にかかる撮影や編集の手間など、工数が大きい案件は単価が高くなる傾向があります。インフルエンサーの過去の実績や影響力などによって料金は変動。業界やジャンルによって幅があることも知っておきましょう。
ギフティングにはインフルエンサーへの報酬だけでなく、商品やサービスの提供にかかる費用も考慮する必要があります。
まとめ
ギフティングは低コストで信頼される口コミを増やすための有効なSNS施策です。しかし、ステマ規制の強化や投稿義務の扱いの誤解、インフルエンサーとの相性といったリスクも存在します。
以下のポイントを押さえて実施してする必要があります。
- ギフティングとは商品提供による任意投稿施策
- 無償ギフティングでもPR表記は必須
- 投稿しないケースもあるため期待値を調整する
- インフルエンサー選定が成果の9割を決める
- 継続実施でデータを蓄積される
ギフティングでインフルエンサーが投稿しないという問題を避けるには、投稿義務を押し付けず、関係構築を重視するスタンスが最も効果的です。投稿後のお礼メッセージを送るなど、インフルエンサーとの好意的な関係を築くためのフォローも必要になります。
UGCやファンを増やす施策としてギフティングを検討する際の参考にして下さい。